春の闇に連れ去らレ
そして、こんなことを考えたりしない。
「緤さんはどう思いますか?」
「……思わねえな」
「そうですか、まあ」
「変わらねえだろ。お前は」
緤はシャワーヘッドを掴んだまま、動かない。
変わらない、とは良いことなのか。
あたしにはよく分からない。
「変わってたら、俺らは出会わなかった」
ぽつりと零された言葉はフローリングに落ちて、消えた。
「あたしに出会いたかったってことですか?」
はっと我に返った顔をした緤はこちらを睨んで、シャワーヘッドを返す。それを受け取ると、浴室から出ていってしまった。