春の闇に連れ去らレ

セツという人間に何か思うことがあるのか。

「おい、そいつをアレのところへやれ」

その言葉に、明らかに表情を変える。

「何を、」
「お前、生きたいか」

ソファーから立ち上がって、すっと気配がなく近くに来た。
驚いてその姿を見上げる。瞳の色がグレーで、その片方には色がない。

「生きたいだろう」

首に冷たいものが当たった。いや、当てられた。

「これでアレを殺して来い」
「殺す?」
「無事成功したら、お前はこの先自由の身じゃ」

冷たいものの正体は、ナイフだった。

今の話の流れでいくと、アレというのはセツという人物だ。

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