春の闇に連れ去らレ
あたしの腕が不自由だった時間にこうして成長するとは。
「腹減った」
子供か。
不機嫌になる前に帰ろう。
家に着くと、既に酒盛りは始まっていた。
「絲ちゃんおかえりい」
面倒くさそうな酔っぱらいの麻をスルーして、出来合いのものを並べていく。
「牛すじ温めます」
「酒蒸しは!?」
「はまぐり買ってきたから自分でやって」
「ええーわかんなあーい」
「緤さん、グラス置いておきます」
レンジで温めた牛すじとグラスをテーブルに置く。緤がソファーに座った。入れ替わりに立ち上がった麻がキッチンに来て生きたはまぐりに対峙する。