前世が猫の公爵は令嬢に撫でられたい
2度目の飼い猫生活は悪くない。いや、かなり良い。


正直、もういいお歳な僕にとってアメリアの遊び相手は楽じゃなかったけど、僕が限界になる前にエレーヌが止めてくれる。

その後は、エレーヌの膝の上でウトウトするのが僕の日課だ。僕を歓迎しているとは思えなかったジョシュアも、なかなかいい奴だった。

エレーヌの膝の腕でくつろぐ僕をたまに恨めしそうに見ているけど無視する。


「アルは、ホントにお母様が好きね。」

アメリアがエレーヌの膝の上から動かない僕を見ながらほっぺを膨らませている。
ちなみに、僕の名前は“アル”になった。エレーヌは僕が“エル”だと気づいてないみたいだ。
でも、そんな細かいことは気にしない。


「アメリアも抱っこしてあげましょうか?」

「違うわ!お母様に抱っこして欲しいんじゃなくて、アルを抱っこしたいの!」


エレーヌとアメリアの話を聞きながら僕はウトウトする。


幸せだった。もう2度と味わうことのできないと思っていた幸せな日々だった。


僕は、自分で思っていたより長生きした。
僕をしつこく遊びに誘ってきたアメリアが、じっと座って僕を撫でるようになった。

その手付きは、エレーヌの次に気持ちいい。さすがエレーヌの娘。

何回冬を越しただろう。

前のように自分からエレーヌの膝の上に飛び乗ることはできなくなった。
思うように体が動かない。

それでも、エレーヌもアメリアも、ついでにジョシュアも僕を大切にしてくれた。
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