前世が猫の公爵は令嬢に撫でられたい
目を開けると、そこには王子様も逃げ出すような綺麗な顔の男性が眠っている。まさかのオリビアの夫である。


おかしい。平凡な夫と結婚するはずだったのに。あんなに何度も見た夢は何だったのかと思う。

だが、それのことはもういいかとも思う。綺麗すぎる夫はなぜかオリビアを溺愛しており、オリビアもそんな夫を愛しているからだ。昔見た夢より、今が大事だ。


最初は近づいてくるたびに、心臓がとびでてしまうほどドキドキした綺麗な顔にも、なんとか慣れた。人間はたくましいものだ。まぁ、自分が図太過ぎる気がしないでもないが。

オリビアは、寝ている夫の頭を撫でる。最近、最年少で宰相の補佐となり、将来は宰相の地位が約束されているほど優秀な夫だが、頭を撫でると子供のように喜ぶ。

今も寝ているはずなのに、口元が笑っている。


「かわいい。」


思わずつぶやいた瞬間、夫が目をカッと開いた。


「うひょっ!」

貴族夫人らしからぬ声を出してしまった。


「あなたの方が可愛らしい」

夫は蕩けるような笑顔で言う。


え?いつから起きていたの?


そんな疑問は、口にすることができなかった。唇が重なり、気がつけば、夫がオリビアに覆い被さっていた。まっすぐに見つめられ、お腹のあたりを撫でる夫の手に、嫌な予感がする。


「朝ですよ。」


「えぇ、しかし、仕事に行くにはまだ時間があります。」


どうやら、オリビアに拒否権はないらしい。


「オリビア、愛しています。」

「私もですよ。」


この後、ベットの上から恨めし気な視線で夫を見送ることになるオリビアだが、幸せそうな夫を見るとついつい許してしまうから仕方ない。





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