前世が猫の公爵は令嬢に撫でられたい
どう声をかけようか、答えが出る前に、相手がルーカスに気づいた。
息をのむ音とともに、ほんの少し飛び上がったように見えた。

夜の庭園で見知らぬ男が知らぬ間に目の前に立って自分を見ていたら驚くのは無理もない。


「あの・・・。いかがされました？」

不安そうに声をかけられた。

不安で何かにすがりたいのか、女性はぎゅっと子猫を抱きしめていた。子猫が苦しくない絶妙の力加減らしく、子猫は相変わらずゴロゴロと喉を鳴らしている。

『うらやましい』その思いがルーカスの頭から離れない。

「その猫はあなたの猫なのですか？」

「いえ。ちょっと夜風にあたろうと思って庭に出たら、声が聞こえてきたものですから・・・」

「あぁ。それでは私と同じだったのですね。」


「まぁ。そうでしたの？」


いきなり現れた男の目的がはっきりしたためか、女性はにこりと笑った。その笑顔にルーカスは見惚れる。


「名乗るのが遅れて申し訳ない。私の名前は、ルーカス・アーガイルと申します。あなたは？」

「え？公爵様だったですか？気づかず申し訳ございません。私は、オリビア・ノースと申します。」


「ノース家というと辺境伯の？」

「はい。辺境伯は私の父です。」


「そうでしたか。」



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