前世が猫の公爵は令嬢に撫でられたい
ある猫の一生
鳴いても鳴いてもお母さんが来てくれない。

体は冷たくなって、動かなくなっていく。もう声も出ない。


「まぁ。大変!」


そんな声がして、全身が温かさに包まれた。ここは天国なのだろうか?そんなことを考えながら目を閉じた。


目が覚めると、柔らかくて温かい何かに包まれていた。しかし、吸い込んだ匂いはお母さんのものじゃない。

「目が覚めたの?」


僕をのぞき込むのは“人間”という生き物だ。お母さんが言うには、人間には3ついるらしい。一つは、僕らに危害をくわえるやつら。二つ目は僕らに無関心なやつら。そして三つ目は、僕らに優しい奴らだ。

もしも優しい人間に会えたなら、精一杯可愛い声を出しなさいって言われた。そしたら、食べ物がもらえるよって。

僕は精一杯可愛い声を出した。すると、人間は僕を抱き上げた。僕はびっくりして暴れたけど、人間が『大丈夫。大丈夫。』って呪文を唱えながら僕を撫でた。

その手はとても優しくて、お母さんみたいに優しくて、僕は安心した。この人間はきっと優しい人間だ。

僕の予想通り、その人間は優しくて、僕に食べ物をくれた。お腹がいっぱいになると安心したからか、眠くなってきた。

優しい人間の手が僕の頭を撫でる。その手は気持ちよくて、僕は眠ってしまった。
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