オオカミ社長と蜜夜同居~獣な彼の激しい愛には逆らえない~
五年ぶりの再会と忘れていたときめき
初恋は実らないもの。
格言めいた言葉をふと思い出したのは、明け方近くに見た夢のせいか。
海を隔てた遠い国で、彼は今頃どうしているだろう。
ぼんやりと考えながら、いつもの朝食を作り終えた荒原美紅は、身支度を終えた姉の佐和子とダイニングテーブルに向かい合って座った。
今朝のメニューは混ぜご飯のおにぎりにだし巻き玉子、セロリの和風漬け。だしから作った味噌汁は、佐和子の大好きなわかめだ。
「いただきます」
手を合わせて箸を持った佐和子は早速お椀に口をつけ、「美紅のお味噌汁は天下一品だよね」と実感を込めて言う。
「ありがと。うれしいな」
美紅はニコニコしながら返した。
たいていのことをパーフェクトにこなす佐和子に唯一勝てるのが料理の腕前のため、美紅は褒められてまんざらでもない。
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