オオカミ社長と蜜夜同居~獣な彼の激しい愛には逆らえない~
別荘に戻ったあとは怪我の手当やみんながいる手前、一慶とはそれきり。店の前で解散して一慶の車でふたりきりになったが、車内でもこれといって話さなかった。というよりは、ぎこちなさのほうが勝って話せなかった。
目を合わせられず、視線をゆらゆらと彷徨わせながらワインを飲む。ほんのりとした甘さが口に広がり鼻から抜けていく。
テイクアウトの料理も、さすがは評判の店だけある。
「おいしいね」
「美紅の作るもののほうがおいしいけどね」
「まっ、まさか」
それは褒めすぎだろう。プロに敵うわけがない。
「ほかの人は知らないけど、俺はそう思う」
一慶は優しく笑った。
いつもの意地悪なノリとは少し違うため、どう反応したらいいのか戸惑う。
「あ、ありがとう……」
やだな。調子が狂うよ。
これまで以上に一慶を意識してしまい、料理まで味わう余裕がなくなる。
その後はとりとめもない話をして食事を終えた。