オオカミ社長と蜜夜同居~獣な彼の激しい愛には逆らえない~
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人の話し声とかすかに鼻をかすめる薬品の匂いが、美紅の目覚めを促していく。瞼に光を感じ、ずっと遠くだと思っていた人の声がすぐ近くから聞こえてきた。
ゆっくり目を開けると見慣れない天井がまず目に入り、すぐさま「美紅」と名前を呼ばれた。
「……いっくん、おねえちゃん」
一慶はそばから、佐和子は椅子から腰を浮かせ、そろって美紅の顔を覗き込んだ。
「大丈夫か?」
そう尋ねられて、店で意識を失ったことを思い出す。その直前に一慶の声が聞こえたのも。
「うん、ごめんね。……もしかして、いっくんが運んでくれたの?」
目に入る光景から察するに、ここは病院だろう。
「最近、美紅が疲れた様子だったから心配で迎えにいったところだったんだ」
「救急車を呼ぶより早いからって、一慶が病院に連れてきてくれたの。私、先生呼んでくるから」