オオカミ社長と蜜夜同居~獣な彼の激しい愛には逆らえない~
好みと違うのではないが、鋭い指摘にドキッとさせられる。
「あ、ううん。すごく素敵だよ」
精いっぱい笑顔で返したが、琴乃との会話が引っかかっているためぎこちなくなる。唇の端がどことなく引きつった。
「……美紅?」
それに気づいた一慶が真顔になる。
いっそ今、イタリアに帰るのか聞いてしまおうか。そう思ったものの、真っすぐ見つめられて不自然に目を逸らした。
「あっ、そろそろご飯の準備しなくちゃ」
パチンと手を叩いて、さも急いでいるふりを装って一慶の部屋を足早に出た。
問いただして、じつはそうなんだと言われるのが怖かったのだ。一慶と離れる現実から目を背けたかった。
たしかめもせず、ひとりで悩むなんて馬鹿げているとわかっている。でも十何年も抱えてきて、やっと手に入れた恋だからこそ臆病にならずにはいられない。