オオカミ社長と蜜夜同居~獣な彼の激しい愛には逆らえない~
名乗らずとも女性の口から美紅の名前が滑らかに出てきた。一緒に住むかどうかの結論を美紅が出すまでもなく話が通っていたらしい。
「荒原美紅と申します。よろしくお願いいたします」
丁寧な女性につられ、美紅も精いっぱい丁重に頭を下げる。
「なにかございましたら、なんなりとお申しつけくださいませ」
美しいお辞儀で見送られ、一慶の後を追ってエレベーターへ向かった。目指すはこのマンションの最上階である五階だ。
「すごいね。さすが世界を股に掛けたデザイナー」
世界的に有名な人間が住むにふさわしい高級マンションは、美紅の視線をあちらこちらへ誘う。自分たち以外は誰もいないのに、妙に緊張して背筋がピンと伸びた。
案内された部屋は予想していたよりも広い。真っ白な壁は清潔感があり、とても明るい印象だ。
家具がないのはもちろんだが、これから日本を拠点にする割には荷物がほとんどない。まさに契約したばかりといった様子だが、冷蔵庫などの電化製品は揃っているらしい。