オオカミ社長と蜜夜同居~獣な彼の激しい愛には逆らえない~
俺が選んだから当然だろう?といった表情だ。
「で、片づけはいいのか?」
「あっ、やりますやります」
ハッと我に返り、そそくさと立ち上がる。小走りで自分の部屋に向かった。
キャリーバッグのほかにダンボールが五箱。荷物はこれですべてではないが、ひとまずはじめる生活には事足りる。
美紅の部屋はしばらくそのままにしておくと佐和子が言っていたから、時間のあるときに少しずつ移動してくればいいだろうと考えていた。
持ち込んだベッドにシーツ類をセット。ダンボールを開け、さまざまな大きさのケースを丁寧に扱いながらクローゼットの奥にしまっていく。美紅が今一番大切にしている〝それ〟は、なにを置いてもここへ持ってきたかったものだ。
洋服もハンガーにかけて吊るし、コスメの類や本などもひと通り取り出してダンボールを空にする。
一慶が美紅の部屋に顔を覗かせたのは、おおまかな片づけが終わった頃だった。
「ほかになにか買い揃えるものはあるか?」
「うーん……あっ、フライパンとか鍋は? ないよね?」
調理用具一式はもちろん、食器類もきっと準備していないだろう。美紅が使っていたものは置いてきたままだ。佐和子は佐和子で新生活をスタートするにあたって買いなおすかもしれないが、すっかり忘れていた。
「ないね。じゃ、買い出しに行くか」
「うん、行こう」
元気よく返してバッグを掴んだ。