オオカミ社長と蜜夜同居~獣な彼の激しい愛には逆らえない~
「……なに?」
いったいどんな命令を下されるのか。
部屋の掃除? 好物を料理しろ? それともコンビニになにかを買いに行かされる?
ほかに思い浮かばず、一慶の言葉を黙って待つ。
「キス、しよっか」
「……え?」
美紅が大きく目を見開いた次の瞬間、一慶が視界を埋め尽くす。あたたかくふにゃっとした感触を唇に覚え、数秒で離れた。
嘘、なんで……?
体が硬直し、どこもかしこも動かない。思い出したように速いリズムで刻む鼓動だけが、胸の奥でその存在を主張していた。
「交渉成立」
美紅の頭をふわりと撫でて一慶が立ち上がる。
「さてと、メシでも食べますか」
ストップモーションの美紅を置き去りに部屋を出ていった。