オオカミ社長と蜜夜同居~獣な彼の激しい愛には逆らえない~
一慶に聞かれ、ハンドメイドのサイト名と美紅の出店名を教える。一慶はすぐさまスマートフォンで検索し、美紅のページを見つけた。
「あとでよく見させてもらうよ。それにしてもこのカボチャ、うまいな」
「ほんと!?」
日本食に飢えているようだったから連日和食にしてみたが、それで正解みたいだ。
「前より腕上げたよな」
「そうかな。うれしいな」
美紅の顔から笑みがこぼれる。
一慶がイタリアに行く以前は、たまに実家で手料理を振る舞うこともあったが、この歳になってまた食べてもらうなんて想像もしなかった。まったくの別世界で生きている一慶とは、もう二度と会えないだろうと漠然と考えていたから。
でもこうしているのも、一慶が日本にいる間だけ。ヨーロッパを拠点に活躍する一慶は、いつかまた日本を離れるだろう。
束の間。ほんの一時に過ぎない。
わかっているはずの未来を考えると胸が痛むのは、いたずらなキスのせい。温度差のある口づけが、閉じ込めていた想いを大きく揺らした。