オオカミ社長と蜜夜同居~獣な彼の激しい愛には逆らえない~
そう声をかけてきたのは、打ち合わせの主導権を握っていた滝沢だ。ノートパソコンを抱えながら一慶の顔を覗き込む。
「ちょっと寝不足が続いてるだけだよ」
「寝不足? デザインのラフでも?」
「まぁそんなところだな」
爽やかに微笑み返したものの、内心では苦笑いだった。
美紅と一緒に暮らしはじめて一週間。一慶は眠れぬ夜を過ごしている。
物心ついたときから一緒にいた美紅は、五つ年下のため妹のような存在だった。
そう、妹のはずだった。
仕事の延長上で連絡を取った佐和子から結婚の話を聞いたのは、日本で本格的にブランド展開をしていくと決定したとき。
一緒に住んでいる美紅をひとりにするのが心配だという悩みを打ち明けられ、真っ先に彼女との同居を提案したのは一慶である。
五年前、一慶は日本を発つときに美紅と二度と会わない覚悟をしたつもりだった。
彼女が想いを寄せるのは晴臣。いつかそれが報われるときに、近くで見るのは御免だった。
ところが、佐和子から話を聞いたときに美紅と晴臣の関係は昔と変わっていないと知り、深く考えるより先に口が動いた。