オオカミ社長と蜜夜同居~獣な彼の激しい愛には逆らえない~
それならどんなつもり?と問いただす勇気は美紅にない。
一慶の横顔がほんの少しだけ曇ったように見えたのは、美紅の思い過ごしだろう。
「そろそろシスコンも卒業したほうがいいんじゃないか?」
一慶がクスッと鼻を鳴らす。
「シスコンじゃないから」
「いや、シスコンだぞ。俺の車に乗るのに佐和子がいないと残念なんてシスコンと言わずしてなんていう?」
「そ、それはっ……」
一慶の気持ちを代弁したまでだ。
かといってそれを口には出せない。彼を想うと不憫だし、一慶の反応で佐和子への想いを再認識しそうで美紅自身もつらくなる。
それならいっそシスコンだからこその発言だと思われたほうがずっといい。
美紅はシートに座り直して口をつぐんだ。
「せっかくだから少し遠回りして帰ろう」
一慶はそう提案してマンションとは逆方向にハンドルを切る。