オオカミ社長と蜜夜同居~獣な彼の激しい愛には逆らえない~
ふぅと息をつき、残っていたカボチャを口に入れる。すっかり冷めきっているのは、昼間とはいえ避暑地の涼しい風のせいだろう。
佐和子は大丈夫かと、ふと目を向けてみると、一慶が椅子で眠りこけた彼女を抱き上げた。ログハウスに入っていくその背中をぼんやりと見送る。
幸司には悪いが、やはりお似合いのふたりだと思わずにはいられなかった。
琴乃に話しかけられた晴臣を置き、なんとはなしに別荘の周りを散歩する。昔よく遊んだ周辺はあの頃よりも別荘が増えているが、秋も深まりつつあるこの時期にひと気はない。
寂しさを感じないのは、馴染みの場所だからだろう。一慶や晴臣を追いかけて、よくこの道を下ったものだ。
足の速い彼らを追うのは五つ年下の美紅には大変で、それでも夢中になって走った。よく転んで泣き、一慶や晴臣におんぶされたのが、ほんの数年前に感じる。
たぶん一慶には、現在の美紅もあの頃のままの印象なのだろう。それは美紅が何歳になってもきっと変わらない。一度妹のポジションになったら最後、永遠にそのままだ。
二度のキスは、ほんの気の迷い。
思い出が蘇り感傷的になったのか、再び無限ループにはまってうんざりした。
せっかくだからアクセサリー作りのヒントになるような野花でも探してみようか。気分を変えるにはもってこいだ。