オオカミ社長と蜜夜同居~獣な彼の激しい愛には逆らえない~
美紅は一慶一色になっていた頭を切り替え、足もとに目を向けた。
間もなく十一月。秋の山には思っていた以上に花があり、美紅の目を楽しませる。鮮やかな色合いというよりは、淡く優しい色がいかにも野に咲く花っぽい。
マーガレットに似た小ぶりの花を見つけて足を止める。マーガレットよりも花びらが細く、シャープな印象だ。
ピアスのモチーフになりそう。
スマートフォンで写真を撮っておこうとワイドパンツのポケットに手を入れ、持っていないと気づく。
あれ? どこに置いてきちゃったかな。
可能性があるとすれば座っていた椅子だ。
仕方がない。薄暗くなってきたし、そろそろ戻ろう。
ふと顔を上げて目に入った景色は、見覚えのないものに変わっていた。野花を追って歩いているうちに別荘からずいぶん離れてしまったようだ。
勘を頼りに足を進めるが、さっき通ってきた道なのかはあやふや。どこを歩いても同じ道にしか見えず、美紅は迷子になったようだ。
やだ、どうしよう。
こんなときに限ってスマートフォンはない。助けを求めようにも車は一台も通らないときている。