オオカミ社長と蜜夜同居~獣な彼の激しい愛には逆らえない~
次第に暗くなっていく山。風が吹くたびに木々がさわさわと揺れて、やけにおどろおどしい。
そのとき不意にバタバタッ!と野鳥の羽ばたく音が大きく響き、それに驚きうずくまろうとした美紅は足を滑らせ、道の脇の傾斜に尻もちをついた。
「キャッ!」
その拍子に傾斜を滑り、美紅の体が転がり落ちていく。
ズルズルッと勢いよく滑り、ようやく止まったのは太い幹の木にぶつかったときだった。
「……いったぁい」
打った背中をさすりながら見上げると、落ちた場所はそこからニ十メートルほど先にあった。
「最悪なんだけど」
痛みというよりは、自分があまりにも情けなくて泣けてくる。
早く戻らないと完全に日が暮れてしまう。急いで登らなければ。
足を踏ん張って立とうとした美紅は「うっ」と呻き、思わず顔をしかめた。転がり落ちたときに左足を痛めたようだ。