オオカミ社長と蜜夜同居~獣な彼の激しい愛には逆らえない~
美紅を見つけられないまま山道を下り、ある場所まで来たときだった。道端に生えた草の一部分が不自然に倒れているのに出くわす。
――まさかここから落ちたなんて言うなよ。
嫌な予感が胸を貫いた。
「美紅!」
暗闇に目を凝らし、下を覗く。すると僅かになにかが動く気配がし、物音が聞こえた。
「いっくん」
か細い声だった。たしかに美紅の声だ。
「美紅! 今行くからそこで待ってろ!」
ズサッと音を立てて、傾斜を滑るように下っていく。二十メートルほど下りた場所に小さく丸まるようにしている美紅を発見した。
「美紅! 大丈夫か!?」
「いっくん……」
今にも泣きそうな顔にかすかに安堵の表情を浮かべる。きっと心細くてたまらなかっただろう。そんな彼女を思わず抱きしめた。