戀〜心惹かれる彼が愛したのは地味子でした〜



「…あ、田中くん」

「どうしたんすか、北川さん」


宴会会場から出ると、2杯目のリクエストを聞きに行こうとしている社会人2年目で今回の宴会の幹事をしている田中くんに遭遇した。

良かった、タイミングバッチリ!


「あのね、いつものように佐藤主任、ピッチ早めに飲んでるから潰れちゃうだろうから、主任の注文は後回しでいいからね。酔ってるから、注文が遅いのも気づかないと思うから」

「またですか…上司を介抱するこっちの身も考えて楽しく飲んでくれたら良いんですけどね。…アドバイス、ありがとうございます」


酔い潰れた成人男性を世話するのは女性陣は体力的に厳しいし、そういった面倒ごとは大抵若手の男性社員に押し付けられるのは暗黙のルールだ。

去年、新人だった田中くんは酔い潰れた佐藤主任を何回も介抱していたから、その時のことを思い出しているのか、うんざりとした顔を隠さない。


「お礼はいいよ。初めての幹事でしょ?何か困ったことがあれば、こっそり言ってね。手伝いに行くから」

「あざっす。そろそろ行かないとクレーム来そうなんで行きますね」

「うん、頑張って」


会場のスライドドアを開けて、2杯目の注文を聞きに行く田中くんを見送り、そのまま私はお手洗いに向かった。


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