戀〜心惹かれる彼が愛したのは地味子でした〜
「北川〜!こっちこいよー!」
お手洗いから会場に戻ると、同じ6年目の同僚チームが座っている席に呼ばれた。
「お疲れー!皆、元気にやってる?」
元の席に置いていたジョッキを回収して、有り難く呼ばれた心知れる同期の元へ向かった。
「久しぶり〜!最近は忙しくて同期会開けてないけど、どうにか元気にやってるわよ〜」
「前にみんなで集まったのいつだっけ?」
「3ヶ月前、くらいじゃないか?」
「新人の頃は、毎週のように集まって愚痴言い合ってたもんだよな〜」
「懐かしいね〜」
新人だった頃は何十人と同期がいたものだけど、6年目ともなれば、寿退社したり、転職したりと同期がポツポツといなくなり、同期会もいつしか固定のメンバーしか集まらなくなった。
「それにしても、”皆の北川さん”は相変わらずの人気だな!」
「え?何よ、何の話?」
いきなり話を振られ、思わず口につけかけたジョッキを下ろす。
”皆の北川さん”
私の知らないところで、カンペキ女子の北川さんという私が一人歩きして、周りにそう言われているのは何回か耳にしているから知っている。
同期のニヤニヤとしている表情から察するに、”あのこと”を言われるのは目に見えた。
うろたえるな…いつもの冷やかしだ。うまく交わせばいい。
何のためにメイクもファッションも、コミュニケーション能力もモテ仕草だって勉強したと思ってるんだ。