戀〜心惹かれる彼が愛したのは地味子でした〜



「ちょっと、スマホ返して!」


数時間前の、私のスマホで母と村雨くんが話をしていた状況とは違う。

いち早く警察に通報、と血相を変えてスマホを取り返そうと手を伸ばす先には、天高く上には私のスマホを握った村雨くんの手がある。


「警察は必要ないから、落ち着け」

「はい?!何でよ、私の私物、全部盗まれてるのよ!?」


私の部屋のもの、全てかっさらっていくなんて、とんだ盗人だわ。

盗まれて困るものなんて多くないけど、貴重品が盗まれるのは本当に困る。

今後の対応をどうしたら良いのか、思考回路が滅裂ながらも必死に頭を回転させている私の真横で、村雨くんは衝撃の言葉を発する。


「部屋のもの全て盗み出す空き巣がいるかよ。彩葉の私物は、俺の使用人たちが全て持ち出したんだよ」

「はい?」


私の私物を、村雨くんの使用人が持ち出した?

何のために?


「持ち出したって…どこへ」

「俺ん家」

「ああ、俺ん家か。…俺ん家?!」


俺ん家って、村雨くんの家!?

数時間前から思ってたけど…村雨くんの言うことなすこと、全てが想像を絶するものばかりで、心臓が何個あっても足りない。


< 36 / 39 >

この作品をシェア

pagetop