戀〜心惹かれる彼が愛したのは地味子でした〜
「ちょっと、スマホ返して!」
数時間前の、私のスマホで母と村雨くんが話をしていた状況とは違う。
いち早く警察に通報、と血相を変えてスマホを取り返そうと手を伸ばす先には、天高く上には私のスマホを握った村雨くんの手がある。
「警察は必要ないから、落ち着け」
「はい?!何でよ、私の私物、全部盗まれてるのよ!?」
私の部屋のもの、全てかっさらっていくなんて、とんだ盗人だわ。
盗まれて困るものなんて多くないけど、貴重品が盗まれるのは本当に困る。
今後の対応をどうしたら良いのか、思考回路が滅裂ながらも必死に頭を回転させている私の真横で、村雨くんは衝撃の言葉を発する。
「部屋のもの全て盗み出す空き巣がいるかよ。彩葉の私物は、俺の使用人たちが全て持ち出したんだよ」
「はい?」
私の私物を、村雨くんの使用人が持ち出した?
何のために?
「持ち出したって…どこへ」
「俺ん家」
「ああ、俺ん家か。…俺ん家?!」
俺ん家って、村雨くんの家!?
数時間前から思ってたけど…村雨くんの言うことなすこと、全てが想像を絶するものばかりで、心臓が何個あっても足りない。