戀〜心惹かれる彼が愛したのは地味子でした〜
「そんなことはない。こう見えて、彩葉を振り向かせるのに必死なんだけど」
「…え」
そんなまさか。
村雨くんがこぼした本音に耳を疑うのと同時に、車は静かに停車した。
「さぁ、着いたぞ」
どうやら車は村雨くんの家に到着したらしい。
停車した場所は地下駐車場。
さっきまで村雨くんのギャップや自分の置かれている現状に気持ちがナイーブになっていたために、全く周りの景色を見る余裕がなくて、家の外観すら記憶にない。
御曹司の村雨くんが住んでる家なんて、私の給料で賄える家賃なのだろうか。
経済面のことを考えだすと、さらに気落ちした心が浮かばなくなるので、強制的に考えるのをやめた。
「運転、ありがとう」
「どういたしまして」
とりあえず、目の前のことに集中しよう。
気持ちを切り替え、車から降りた私は、素直に村雨くんの後をついていくことにした。