消えた卒業式とヒーローの叫び
「永遠は、どういう感じのを作ってんの? 恋愛ものとか、高校生向けとか」
特にすることが無かったのか、先程と変わらぬ話題を持ち出してきた。私は鞄を掻き回す手を止め、チャックを閉める。
「一応、中学生が主人公のもの……」
声は小さいながらも、私はハッキリと答えていた。恐らく、アニメについてだからだろう。趣味について共有出来る仲間は今まで居なかった。
日彩ですら、私が動画を投稿してることを知らないはず。だから、どこかで楽しんでいる自分に気付いていたのかもしれない。
「そうなんだ。俺は今まで自分の年齢に合わせた主人公にしてきたけど、次は中学生にしようかな」
上原くんが凪いだ目付きで遠くを見つめた。その先には地元の制服を着た、男子中学生が楽しそうに会話をしたり、ラーメンをズルズルと啜っている。
休日だから部活帰りなのかもしれない。私の中学は、寄り道を禁止されていたが。
「あそこ、部活帰りかな。寄り道とか、俺の学校じゃあ怒られてたけど。今は違ってんのか、それか普通に校則違反をしてるだけか。そういうのって、やっぱりその年齢でないと分からねぇし、リアリティ出ないから難しい」
同じことを考えていた事に驚いていたことが顔に出たのか、上原くんは眉を下げ、ため息のごとく小さな笑いで吹いた。
どこか気恥ずかしい思いに支配され、肩を竦めて鞄を抱き寄せる。