消えた卒業式とヒーローの叫び




 高校二年最後の実力テストは、いつもの授業より二時間ほど早く終わりを迎えた。


 上原くんが校門で自転車を押して待ってくれていたため、そのまま歩いて日彩の中学へと向かう。

 今回も中の下辺りだろうか。実際の成績には入らないと伝えられているため、正直あまりやる気が出なかった。

 進路も考えないといけない時期なのはわかっているが、まだ何をしたいのか私には見えてこない。

 そもそも高いお金を払ってまで進学すべきなのかもわからなかったが、既に自称進学校の波に呑まれていた私は、必然的にその道を歩まされていた。

「ここが二中か」

 いつの間にか、懐かしい門が目の前にあった。

 錆びついて、少し禿げている黒い鉄の門。
 赤みが濃いレンガ造りの壁についたインターホンを、上原くんが押した。

「すみません、先日連絡した上原です」

 挨拶をし、一言二言何かを話して会話を終えていた。私の母校というよりも、上原くんの方がそれらしい。

 マフラーからは白い空気の粒が立ち上っていた。

「あ、こんにちは。ちょっと待ってなー」

 どこか聞き覚えのある男の先生の声が近づいてきて、来客用の門を開ける。

 外と変わらぬコンクリートの地面なのに、特別な場所へ足を踏み入れたような心地がした。


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