消えた卒業式とヒーローの叫び
何かが頬に降ってきた。雨だと思った。でもそれは生暖かい雫で、雨雲となって雨を降らせるのは私の目だった。
「永遠? 大丈夫か?」
必死に涙を拭う私を見て、上原くんが声をかけてきた。
「ご、ごめん」
これはただの練習に過ぎない。それなのに、生徒たちや日彩はキラキラと輝いていて、私の心を奪ったんだ。
涙は本番に取っておきたかったと思ったが、きっと同じように溢れてくるだろう。
やがて歌は静かに溶けた。左手と指揮棒がキュッと結ばれ、足を閉じる。
その声量に満足したのか、先生も日彩を敵視しつつ頷いていた。
「まあ、本番はこれ以上のものを目指して、練習しておいてくださいね。では今日はこの辺で終わります」