消えた卒業式とヒーローの叫び
半分に割れた目玉焼きのような太陽が落ちる。一面オレンジ色の光で覆われた、細く長い道のりを二人で歩いた。
自転車の車輪がからからと回転する。わざわざ押して歩く必要もないのに、上原くんは歩幅を合わせて隣に並んでくれた。
「どうだった?」
漠然とそう聞かれた。普段の私であれば、そこで言葉の意味を探ろうとするのに、今回は即答してしまっていた。
「キラキラしてて、眩しかった。青春だなって思った」
果たしてこれが、上原くんの聞きたかった答えかどうかは定かではない。
それでも私はそう思ったのだ。当時の私にはわからなかった輝きが、失ってみると良く見える。
「良い取材になったな。自分が中学生の頃には見えなかったものや感じなかったことが見えてくることもあるし」
自分も別の中学校の様子を知ることができて良かったと、上原くんは満足気な横顔を見せていた。
冬の夕暮れは早い。一歩ずつ足を進める度に影が伸び、群青色がゆっくりと世界を覆う。
「永遠は次、どんな話にするんだ? この取材を活かすような作品?」
言葉と共に溢れた白い息が、天然のスポットライトに照らされて輝いた。
次の作品か。何も考えていなかった。でも、そろそろ今投稿しているアニメも完結するから、取材を活かせるようなものにしたいな。
『色んな経験をして、それを元に作ることが一番大事かな』
以前、上原くんに言われた言葉が脳裏をよぎる。その瞬間、ある過去のしがらみが砂嵐のように汚い残像として流れてきた。
これまでの経験を活かし、今回得たものを掛け合わせたもの。
苦しくて、悔しかった。そんな過去でも、自分の力で願った通りの世界に書き換えられる。それが創作の最高の利点なのかもしれない。
「男の子に大切な絵を破られた女の子が、その子を撃退する話にでもしようかな」
靴が地面に擦れる音がして、自転車が止まった。カラスの鳴き声が無駄に大きく響き渡る。
不思議に思って、私も数歩進んだ先で足を止め、体を半分後ろへ向けた。
「それって、どういうこと?」
上原くんは、心配しているような、怒っているような表情で私を見つめていた。何故かその目を逸らしてはいけない気がして、私はレンズ越しの瞳に吸い寄せられる。