消えた卒業式とヒーローの叫び
彼の問いがはっきりと理解できない私は、行き場のない空っぽの手で、背負っていた鞄の紐を弄った。
「上原くんが、前に色んな経験をして、それを元に作ることが一番大事って言ってたから……。私の苦い過去と、キラキラしてかっこいい日彩みたいな子を掛け合わせたの。
私が日彩みたいだったらどうするかな、あの時の自分を救ってあげられるかなって」
上原くんは、相変わらずその場から一切動かなかった。まるで彼だけ時が止まってしまったかのように、太陽だけがゆっくりと傾く。
私も困惑して、視線を下に滑らせた。背の高くなった、真っ黒の自分がそこにあった。
「その……大切な絵を破られたってのが、永遠の苦い過去なのか?」
やや間があって、上原くんが口を動かした。何か思い詰めたように、自転車のブレーキを何度も弄んでいる。
何故こんなことを聞くのか、私にはわからなかった。最初からずっとそうだ。上原くんは、まるで未来か過去からやってきた人かのように不思議な人。
「……そうだよ。小学校の時の話だけど……。私は何も出来ずに泣いてたから。私の生み出すお話の中で、過去の自分を救えたらいいな、なんて……」