消えた卒業式とヒーローの叫び



 小学生の時、ずっと一人の男の子に虐められていた。

 暴力こそなかったものの、鉛筆や消しゴムを取られたり、黒板を消す時に邪魔をしてきたり、給食を配る際、私のおかずだけ少なくしたり多くするなど、あからさまな嫌がらせを受けていた。

 私が大人しく、言い返しもできなくて反応が面白かったのかもしれない。

 それに終止符が打たれたのは、忘れもしない、卒業間近の頃。

 入院中だった日彩を元気づけるために、昼休みに私は絵を描いていた。

 当時の私にしては、上手く描けたと思い、特定の仲の良い友達はいなかった私は、一人それを眺めて喜んでいた。

 そんな様子を見ていたのだろうか。また私に近づいてきた男がいた。

「何描いてんだよー! うわ、へったくそ! 女子同士で手繋いでハートとか描いてる、きっもー!」

 そう言いながら、私の絵を奪い取られた。もう名前も思い出したくない。そう、あの人の名前はーー。


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