消えた卒業式とヒーローの叫び




「そいつのこと、恨んでる?」

 上原くんは、やはり表情を変えずに聞いた。

「恨んでるとまではいかなくても、やっぱり辛かったかな……」

 松木に虐められたことも辛かったが、なによりその後のある出来事が決定打となり、今に繋がる傷痕となっている。それがずっと辛くて、苦しくて、だから私は日彩のようにはなれない。

「そっか……」

 上原くんがハンドルを固く握るのが分かった。後ろからチリンと音を立てた自転車が、私と上原くんの間を通過する。

 空に浮かぶ目玉焼きは、もうほとんど食べ尽くされていた。

「ごめん」

 上原くんは、珍しく足元を見てそう言った。いつもなら、真っ直ぐに私の瞳を貫くのに。

 言葉の意味が分からず、私は「え?」と間抜けな声を出した。

「全部知ってた」

 続けて彼の口が動くも、私の思考は動かない。ただ混乱していた。

 どういうことだろう、何を知っているのか。上原くんは一体何者なのか……。



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