消えた卒業式とヒーローの叫び
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七時間の授業を終えて学校から帰宅すると、今朝足の不調を訴えていた日彩が、受験からの解放感からか、向かいにある彼女の部屋の扉を開け放ったまま、ベッドで眠っていた。
私は起こさないようにと、静かに自分の部屋に入り、ゆっくりと扉を閉める。
鞄を直し、制服から部屋着へと着替えた後、いつものようにパソコンに向かった。液晶タブレットも起こし、目を開けたそれは描きかけのイラストを映し出す。
そして黙々とペンを走らせた。
絵を描いている時間は、私にとって至福のひとときだ。ただ目の前の作品を眺め、改善点を見つけて直す。
そしてまた新たな線を描き、色彩を加える。色使いや影の表し方で、登場人物の顔色や雰囲気までも自由自在に操ることができるのだ。それがひたすら楽しくて仕方なかった。
今日描くものは、この作品の最終話のラストシーンとなる。一つの作品が完成する喜びで、私の手は止まることを知らなかった。
一人で一つのアニメーションを作ることはとてつもなく大変で、細部の細部まで拘ってはいられない。大雑把にしてしまうところはあるが、取り敢えず何十枚もの絵コンテを描き上げた。
あとは線画を描き、色も付けて、動きやタイムラインを調整しようと考えていると、ドタッと鈍い音が、扉の向こう側から聞こえる。
何か重い物でも落ちたのだろうかと思いながらも、私はそのまま動画の作成を続けた。横目で時計を見ると、午後六時を少し過ぎたところだった。