消えた卒業式とヒーローの叫び
遠くから母が誰かに呼ばれたようで、それじゃあ、と耳元で軽快な機械音が鳴り、静寂な空間に引き戻される。
真っ黒になった長方形の物体を机に置くと、無我夢中で描いたらしい絵と嫌でも向き合わされた。
ラフ画から下書きへと移り、ある程度描かれてあったが、明らかにいつもよりも酷い物だった。線は勢いに任せただけと言わんばかりに跳ねており、顔の輪郭も少し歪んでいる。画面に近づきすぎて、全体像が見えなかったのかもしれない。
でもなんとなく、その絵は日彩に似ている気がした。涙を流す、日彩の表情にそっくりだった。
手と唇が震え出す。涙は未だ枯れることなく、体内の水分を奪った。手の甲で拭うと、氷になりそうなほどにそれは冷たい。
怖かった。夢の中での出来事がこのことを伝えようとしているのだと考えると、居ても立っても居られなかった。
本当に日彩が死んでしまうのではないかと、一瞬でも想像するだけで、胸が張り裂けそうになった。
失いたくない。たった一人の私の妹だから。どんなに喧嘩をしても、憎たらしくても、恨んでも、羨ましくても、日彩が居なくなるなんて耐えられない。
二度と話せなくなるなんて嫌だ。仲直りもできないまま終わってしまうなんて嫌だ。