消えた卒業式とヒーローの叫び
*
「永遠……前田永遠さんいますか」
変に私の名を言い直すのは、先日の男だった。教室の後ろのドアに手をかけ、覗き込んでいる。
クラスメイトは一度その人を見たあと、首を後ろに回し、私に視線の矢を放つ。
私はその矢に抵抗することなく、寧ろ体中に刺した状態で、鞄を持って廊下に出た。
「永遠、部室こっちだけど」
わざとらしく彼に背を向けたのに、いとも簡単に引き止められてしまった。名前を呼ばれてしまっては『誰に言ってるのかわからなかった』が通用しない。
私は少し肩をすくめて、彼のいる方向につま先を向ける。
そんな私の様子を見て、彼は歩き出した。高くも低くもない身長で、他の人より少し色素の薄い髪が揺れている。
初めてまじまじと見た。この人があの絵を描いたのだろうか。
その技術を自分のものにしたくて、私は一定の間隔を保ちながらついて行く。
帰宅や部活の生徒が廊下に溢れているおかげで、誰も私が彼に付いて行ってることなど思いもよらないだろう。それほどに自然で、ある種不自然な距離感だった。
「永遠……前田永遠さんいますか」
変に私の名を言い直すのは、先日の男だった。教室の後ろのドアに手をかけ、覗き込んでいる。
クラスメイトは一度その人を見たあと、首を後ろに回し、私に視線の矢を放つ。
私はその矢に抵抗することなく、寧ろ体中に刺した状態で、鞄を持って廊下に出た。
「永遠、部室こっちだけど」
わざとらしく彼に背を向けたのに、いとも簡単に引き止められてしまった。名前を呼ばれてしまっては『誰に言ってるのかわからなかった』が通用しない。
私は少し肩をすくめて、彼のいる方向につま先を向ける。
そんな私の様子を見て、彼は歩き出した。高くも低くもない身長で、他の人より少し色素の薄い髪が揺れている。
初めてまじまじと見た。この人があの絵を描いたのだろうか。
その技術を自分のものにしたくて、私は一定の間隔を保ちながらついて行く。
帰宅や部活の生徒が廊下に溢れているおかげで、誰も私が彼に付いて行ってることなど思いもよらないだろう。それほどに自然で、ある種不自然な距離感だった。