消えた卒業式とヒーローの叫び



 次の日の放課後、私は自主的にとある部屋の前に立っていた。

 黒く分厚いカーテンで遮られた光。人気の少ない廊下。

 すうっと大きく息を吸い、深く長く吐き出す。手がほんのり冷たくなって震えていた。どくどくと心臓が脈を打つ。

 それでも私は腕を持ち上げた。やめようと脳が選択する前に叩いてしまおうと思った。


 日彩だって頑張ってるんだ。日彩に出来るのだから、同じ血が流れている私にだってできるはず。やる前から諦めるな私ーー。


 目をきゅっと瞑り、扉を三回叩いた。見本のように軽い音が弾ける。だが、カーテンに吸収されてしまったのか、中からは反応がなかった。聞こえなかったのかと思い、扉の前でそわそわとする。

 もう諦めて帰ろうかと思った時、廊下の向こう側から三本の影が現れた。

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