思い出と未練と
「そうかな」


ちょっと照れながら言った。


誰にきれいと言われても意味はない。


きれいになりたかった理由も

きれいになった理由も

他の誰でもない裕稀にきれいになったって思われたかったから。


でも言われるわけないって思いながら次の言葉を待つ。



「うん、ほんときれいになったと思う」



自分の中でほんの一瞬だけ時が止まったみたいだった。


あんなにうるさかった会場が静かになった感覚。


目頭がじわじわと熱くなる。


初めて本当の意味で努力が報われた気がした。


今までのいろんな思い全部がふわっと浮かんで、成仏したみたいな気分だった。


例えるなら

肩の重荷が全部降りたような

そんな感じがした。


目から出るしょっぱい水が出ないように必死に目の付近の筋肉を活用して

ありがとう

と笑顔で伝えた。

< 42 / 49 >

この作品をシェア

pagetop