暁の夕暮れ ~春の章~
仕事
次の日。
「おはよう、ことね」
「おはようございます、皆さん…」
私は目を擦りつつ、皆さんに挨拶する。
「まだ眠そうだね」
「はい、番組の収録とかで寝る時間が遅くなってしまって…」
いろんな番組に引っ張りだこでねぇ…
どこで私がデビューするって聞いたんでしょうね…
「そっか、お疲れ」
「今日は午前、ライブのミーティング。午後からは、ことねも一緒に新しいドラマの撮影」
「はい」
ライブのミーティング…会話でそういう単語が出てくるとは。
やっぱりアイドルなんだなぁ…
「……うぅ、緊張する…」
「大丈夫?眉間にシワが…」
「すごく緊張してるので…!」
だって、テレビだよ?
演劇の舞台とは違って、カメラがあるんだよ?失敗したら迷惑かけるんだよ??
緊張するに決まってるよぉ…!!
「緊張してるなら、手貸して?」
菜央さんがそう言う。
「……え?」
「いいから」
右手を出すと、菜央さんは手のひらの真ん中をギュウッと押す。
「…いたた…ん、いや…痛気持ちいい?」
「こうすると、緊張ってほぐれるんだと」
「へぇ…初めて知りました」
おかげで、少し落ち着いた。
「ま、一緒に頑張ろう」
「はい、頑張ります!」
「元気がよくてよろしい」
秀也さんは、微笑んで言う。
よーし、皆さんの足を引っ張らないように頑張ろう!
こうして、私の新生活は始まった。