暁の夕暮れ ~春の章~
「うん、じゃあ左手と左手で指切りしようか」
私は菜央さんと目をあわせて、頷く。
「「はい!」」
小指と小指を絡ませる。
「「指切りげんまん、嘘ついたら針千本飲ーます、指切った!」」
二人で声をあわせてそう言うと、自然と笑顔になった。
「何を約束した?」
「…はい?」
「まぁ、急に言われても、だよねー」
ええ、そりゃもちろん。
「俺はねー…」
そう言うと菜央さんは、私の耳元に口を寄せる。
そしてこそこそと耳打ちする。
「……っ!」
「ふふっ、恥ずかしい?」
「そっ、そりゃそうですよっ!!」
私は顔を赤らめて叫んだ。
菜央さんに耳打ちされたこと。