暁の夕暮れ ~夏の章~
「……はあぁ…」
深々とため息をつくと、キィ…と、ドアが開く音がした。
「……ん?」
「あ…秀也、さん」
「こと、ね…?」
俺は立ち上がると、彼女に近づく。
「……本物か?」
「へ?は、はい……そうですけど」
「幻かと思った」
本物かどうかを確認するついでに、俺はことねを抱きしめる。
「ど、どうしたんですか?秀也さん…」
「……よかった…」
なんだかホッとして、声に涙がにじむ。
「心配、かけちゃいましたか?…すみません」
俺の異変に気づいたのか、気づいていないのか、ことねが謝ってきた。
「俺こそ、目ぇ離してごめんな。…でも、見つかってよかった」
放すものかと、少し力を強める。