暁の夕暮れ ~夏の章~
秀也の気持ち
「すっげぇ焦って、悩んで、迷って…よかったよ、めげずに探してさ」
「ありがとうございます、見つけてくれて」
「……ごめんな。もう絶対ぇ、迷子になんてさせねぇから」
「…私も、気をつけます」
優しく、軽く笑ったような声でそう言う。
「俺から、離れんじゃねーよ?」
「え…?」
「俺が、守ってやるから。未来永劫みらいえいごう、ずっと…お前の隣にいる」
再び、そっと…ぎゅっと、ことねを抱きしめる。
「お前が好きだ、ことね」
「……私は、自分が何なのか…よく、分からないんです」
「急に、どうした?」
「……私は、私の心の声…自分自身の気持ちが、分からないんです。まだ、掴めていないというか…」
「…そうか。俺は、いつでもいいぞ?」
と、彼女の頭にポン、と手を置く。
「何が、ですか?」
上目がちに、そう尋ねることね。
「お前の、返事」
そう言って、俺はことねの頭をくしゃっ、となで回した。