暁の夕暮れ ~夏の章~
【ことねside】
「な、そうやってずーっと…上向いてるつもりか?」
「…へ?」
私は目線を上にして、秀也さんの顔を見る。
「首、疲れねーの?」
「え?あー…はい、少しは」
私と秀也さんの身長差は、相当あるみたいですね。
それこそ、頭1つ分とか。
「俺と同じ視線で、空…見てみるか?」
「えっ、何ですか急に……っ?!」
私の足が、ふわりと宙に浮く。
いつの間にか、私は秀也さんに抱っこされていた。
「ほら、広いだろ?」
「……こんなことしなくたって、空は広いですよ」
少し拗ねたように言うと、
「ふっ、そうだったな」
と、笑みのにじんだ返答があった。
「わ、笑わないでくださいよぉ……」
「……俺、お前と…この景色を共有できて嬉しい」
その声に、私は秀也さんの方を向く。
パチッと、目があった。
「背伸びしても届かないくらいの景色、気持ちいいだろ?」
と、微笑む秀也さん。
荒々しい一面もある秀也さんだけど、とても優しい笑顔だった。
「…はい」
と、私は頷く。
その後、どちらからともなく空を仰いだ。