暁の夕暮れ ~夏の章~
涼の気持ち
少し寂しげに呟くと、涼さんは私の耳元に唇を寄せて、そこに手を置く。
「僕が言いたいのは……」
こそこそと、耳打ちされる。
かすかにかかる吐息がくすぐったい。
「言いたいのはね、君のことが……好きってこと」
「っ……!」
「多分、どこにいても変わらない…君が1番好きな人。ずっとずっと、永遠に」
「ま、まだ…分からない、ですよ……?」
「うん、君の心が素直に受け入れてくれるのを…僕は待つよ」
『もちろん。いつまでも待つよ』
菜央さんと、重なった。
切ない笑顔も、寂しげな声も…“恋”をすると、人は似るんだろう。
私も、恋がしたい。でも、なぜだか…怖い。
“誰かを好きになること”とは何なのか。
いつか、知りたい。
* * *