暁の夕暮れ ~秋の章~
「……熱が…」
そう言った冬麻さん。
「やっぱり…」
私は、申し訳ないと思った。
「ことね?」
「あっ、いえ…何でもないです」
「うつしちゃったかも…って?」
図星だった。
「……はい」
「大丈夫だ、咲夜はそんなことで怒りやしない」
秀也さんが、肩をすくめながらそう言った。
「……そう、ですか」
少し、気が楽になった。
「ことねの看病、咲夜が1人でしてたんだ」
「え……?」
「あぁ、そう。立候補してな」
「……そうだったんですか…私、恩返しがしたいです」
「恩返しがえし、か」
「恩返しがえし、確かにな」
そんな2人の言葉に、私は少しポカン。
「………どういう、こと…でしょうか?」
「咲夜も恩返ししたいから、って言ってた訳でね」
「あぁ、だから…」
恩返しがえし、か…
* * *