公開告白される君と3日間の旅 ~夏休みは境界
裏方の魔法使い達
船は、速度を早めに 港に
向かっている。
走行中は、ライフベストを
全員着用させられた。
お揃いの オレンジベストを着て、
副女さんの告白を聞いた全員は、
只只、驚いていた。
「あー。でもやっぱり1番困る
のが、服だわ。さすがにスーツ
持ってきてないし。港で買うにも
きっと時間がないし。迎えが直接
回されてるみたいだから。」
副女は、そう肩をすぼめてみせた。
「え、そんなに時間ないの?
少しは、服とりに行けるん
じゃない。あんまりでしょ。」
会計女が 唇を青ざめさせて
副女に 応えるけど、
「向こうは、そんな猶予を与える
時間はくれないみたい。なるべく
反撃の時間を やりたくないんで
しょうよ。そんな気もないけど」
副女と会計女の やり取りを、
聞いていた ハジメが 声をかける。
「あのさぁ、そんなに服装って、
大事なのん?学校の外の会議な
だけならぁ、急に呼ばれても
揃えられない事だってぇ、
あるもんなんでしょ~。」
ヨミと、シオンも ハジメの意見に
同意するように、
頷いている。
けれども、副女と会計女は、
「例えば、お葬式が入れば
何がなんでも、喪服で参列する
よね?それと同じなんだよ。」
ため息交じりに、返事をして
会計女は、
「アタシ、持ってる荷物に、
使えそうな服ないか、考えるよ」
と、鞄の場所に移動した。
それを聞いた ハジメは、
眉毛をハの字に下げる。
「そんなに~大事なのかぁ。
参ったなぁ。水着とか、リゾート
パレオならさぁ、用意してるけど
ドレスって訳にいかないよねん」
ユキノジョウも ユリヤも、
その話を 真剣に聞いていた。
もう何年も 行事を見てきている。
正装とか、着物、袴、
ありと
あらゆる 服装の規定を
肌で感じている。
今、リゾート気分満載の洋服しか
無い事の 重大さを
子供ながらに、
感じていた。
再び、船内の空気が
重くなるかと 思った時
「あ!!オーナーっ!あれ!」
シオンが、ハジメのスーツを
引っ張った。
「あれを、リメイクしたら、
グレーのワンピースとか なる?
かも?しれないですって!!」
シオンの言葉に、ヨミも興奮して
「そうよ!オーナー。あれです。
シスターグレー!!使いましょ」
シオンと同じく、ハジメのスーツを引っ張ってくる。
「なにぃ?皺になるからぁ。
やめてよぉ。シスターグレー?
そんなのあったっけ?って、
あぁ~~~あれ?!あれか~」
興奮する3人に、
ユキノジョウ達は ???な
表情だ。
「乗りかかった船だよぉん。
副女さんに、上手くいけばぁ、
最高の衣装を、着せれるかも」
そう言って、タレた目をウインク
する。
「さあぁ、みんな!サロンへ、
ご招待するよん。我がクルーズ
ギャラリーに~。いらっしゃい」
そう言うや、
デッキの奥の階段に、
ユキノジョウ達を 案内する。
「ハジメさん。
下行ってもいいの?」
アコが 興味津々で、ハジメに
聞いている。
ジャグジーがあるデッキは、
半オープンデッキで、 その奥に
シャワー室があった。
このデッキのオープンに、
ジャグジーが設備されていて、
半分には ビーチソファーセット、
ガーデンテーブルセット、
バーカウンターがある。
このデッキまで 直接上がってきた
ユキノジョウ達は、
まだ 下のサロン階には
入っていなかったからだ。
「オーナーがOKと言ってますから
ぜひ、どうぞ。その代わり、
貴重な物がありますから、
気をつけて下さいね。いい?」
ヨミが、
波形の細工ツルを 、指先で
押し上げて、アコに笑う。
3層になる 2階は、サロン階。
今回の移動する
ギャラリーとして 内装している
と、ハジメが ドアを 開けた。
「「「うぁ。・・・・」」」
子供達が 思わず歓声をもらす。
中は、青いステンドグラスの
教会を模倣した、装飾に
絵画や、美術品、アート作品
宝飾、骨董等が 部屋を
構成している。
「なに、、これ」
船の中が、
まさか こんな風になっている
とは、露にも思わない。
湿度や温度の管理も厳重なのか、
青い室内のせいか、
一層ヒンヤリとする
サロン。
その真ん中に、ガラスの箱が
テーブルの様に横たわる。
「シオンくんはぁ、これの事を
言ってたんだよね?でも~、
そのまんまじゃ、ダメじゃない」
ハジメが、そのテーブルを
指さした。
「基本、服ですもん。直しは、
長袖を、半袖に。トゥニカの
丈を詰めて、ウインプルを
ケープ襟でつければ 大丈夫っ」
シオンが、前のめりで ハジメに
提案する。
「なるほどね。それなら、
グレースケリーが着てそうな
スーツワンピースになるわ。」
2人の会話に、ヨミも賛成する。
ユキノジョウ達は、
そんな会話でも、あまり
ピンとこない。
「ほらぁ、来て見てごらん~。」
ハジメに呼ばれて、テーブルを
上から見て、
ユキノジョウは、ギョッとする。
ユリヤも、後ろから
覗き込んだ。
「人?」
ユリヤの声に、アコも飛んで覗く
「うあ!、お母さん!人がいる」
何それ?!と、母親達が
ガラステーブルに近づいた。
「?!デス、マスク、?」
副女の呻き声に、
ハジメが 口を弓なりにした。
「そうぅ~デスマスクアート。」
ガラスのテーブルの中に、
草花の造花に納められた
修道服のデスマスクが ある。
まるで、水中の オフィリーヤだ。
「うぃ、、」
会計女の眉間に皺がよる。
「オーナー、意地悪して遊ぶ暇は
今はないと思われますけど。」
ヨミが、ハジメを嗜めた。
「ごめん、ごめんよぉ~。本物の
デスマスクじゃあないんだよねん
『デスマスク調』のアート~。
だから、体もないけどぉ、ほら」
ガラスのテーブルだと思ったのは
ガラスの棺ケースだったのか、
蓋をハジメが 『キィン』と
開いた。
「体は、修道服に綿を入れて
形を作ってたんですっ。これ!
このグレーの修道服をリメイク
したら、正装ワンピースっぽく
なりますって、絶対!!」
シオンが、デスマスクを
外して、体にしていたという
グレーの修道服を持ち上げた。
「それにしてもさぁ、シオンくん
別にデスマスクにぃ体は作ら
なくて良かっんだよん~。」
確かに、夜にサロンに入るのが、
とか、ヨミが 愚痴を言う。
ユキノジョウと ユリヤの
顔色が 悪くなった。
アコは、すでに離れている。
「だってですねっ、自分の
エンディングワンピのイメージを
ちょっとしたかったんですよ!」
シオンが、副女に 修道服を当てて
直し丈を 見ながら応える。
副女も、これを直せたら、
助かりますとか 礼をして、
会計女に、どうかと 聞いている。
「だから、後輩ちゃんは 先に
ウェディングドレスを
考えなさいよ。いつもいうけど」
ヨミが ジト目で シオンを
手伝う。
「あの、ハジメさん。本当に
いいの?これ、商品なんじゃ。」
副女が 修道服を当てられながら
ハジメを見やると、おやと、
「デスマスク演出のディスプレイ
扱いだからねぇ~、何本も金額は
しないんだけどぉ。アンティーク
ではねぇ、あるんだよねぇ。」
顎に、手をやり考えるポーズに、
「アタシ達でも 船の移動で
直せるから、助かるのは
助かるけど、、、、」
副女の言葉に ハジメは、
また口を弓なりにした。
「高いよん。でもねぇ、金額では
ないんだよねん。
こ~ゆ~時の 相場はねぇ。」
「今すぐは無理だけど、戻ったら
振り込みするよ。って、そんなに
高いの?マジで?うそ?でも、」
副女の言葉を 遮り、ハジメが
ユリヤを見て言ったのは、
「香箱ちゃんのぉ、ポケットに
入っている大事なぁモノ。
それを、担保にしてもらう~」
だった。
「ユリヤのポケット?」
副女と、会計女、アコは 意味が
わからない顔をするが、
他の4人は、ハッして意を汲む。
「いや、オーナーそれは無し
ですよっ。いくらなんでも!」
シオンが 顔色を悪くする。
自分の提案が 意外な結末を
招く 予感がしたのだ。
「えぇ~。これ程担保に向いた
素敵なモノはないよん~。」
ヨミも、
「いくら、前が 絶対担保になる
目利きだったからって悪魔です」
と、非難する。
その様子に、副女が ユリヤを
心配して
「ユリヤが嫌なら、いいから。
この話は、なかった事にして」
と、ユリヤの肩を ポンポンと
柔らかに あやした。
ユキノジョウは、
そんな 副女とユリヤを 見つめ
ながら、
走馬灯のように、これまでの
行事で 慌ただしく着替える
副女と、手伝う ユリヤを
思い描く。
入学式や卒業式の着物に、
離着式の 袴。夏祭りの 挨拶回りに
浴衣を 着付けて、
行事の 挨拶には、何タイプも
礼服を 用意して、
急な 葬式に 対応するのに
ロッカーに 喪服を入れて。
それは、式服という
武装 だったはずだ。
今、最後の最後に 戦いに出る
戦闘服が ない。
ユリヤも そう 考えていると
ユキノジョウは わかったから、
「ユリ、オレはいいよ。」
と、ユリヤに 伝えた。
その声に、肩を揺らして
ユリヤが ポケットに手を当てる。
ユキノジョウは、
ユリヤの目をみて、
頷いた。
それを、合図に
ユリヤは、黙って ポケットから
それを ハジメに
差し出す。
と、
白く
小さな手を開くと、
青い教会のサロンに、
ステンドグラスからの光を
受けて、
ガラスの靴が
オーロラの虹を パァンと、
青い
天井に
作った。
大人達が、
「「「「へぇ!」」」
っと、その光が作った
波の揺らぎのような
プラネタリウムに 間抜けな声を
あげる。
「ママ。ユキくんに さっき
もらった。これを、服にして」
ユリヤが
半泣きになって、副女に
すがった。
「ユリヤちゃん、、」
会計女が、声を漏らす。
「副女さん、それ、お金払ったら
返してもらえるんだよね!
オレも 払うから 使ってよ!」
ユキノジョウも、強い目をして
副女を 助けると、
会計女も、アタシも払うよ!っと
叫んでいる。
そんなやり取りを
ハジメは 聞きながら、
差し出された
ガラスの靴を
傍らにあった、シルバートレイに
大切な様にして 置く。
「じゃあ~、交渉成立~。」
ハジメは、口を弓なりのままに、
ユキノジョウに 語る。
「この靴にぃ、もしもだよ?
意味が無くなった時はぁ、
服の金額をね?踏み倒す事も
出来るからねん。覚えててね?」
そんな、ハジメの言葉に
ユキノジョウと ユリヤは、
目を瞬きだけする。
女性陣の非難の視線は、
半端がない。
「では、みなさん!早速 戦闘
開始ですよ!服を直します!」
ヨミが、パンと手を叩いて
各々のこれからを、
次々に指示する。
「後輩ちゃんと、白鷺くんママは
服の直しを、私とします。
袖を後輩ちゃん、裾を白鷺ママ。
襟ケープを私で。よいかしら?」
女性陣が ふざけて
『ラジャー!!』と
返事をする。
「オーナーと、副女さんは、
服の売買契約を 、オーナー?」
ヨミは、すちゃっと、
指を立てて、ハジメに言う。
「はぁ~い。鬼軍曹~。」
そんなヨミに ハジメが応えると
「何が、鬼軍曹ですか!よっぽど
オーナーの方が 奪衣婆です!」
シオンがやり返した。
「子供達は、炊き出しです!
炊飯器ありますから、おにぎり
作れますか?お味噌汁と。」
ユキノジョウと、ユリヤは
大きく頷く。
「子ども会の夏祭りで、いつも
豚汁やるから、大丈夫だぞ!」
アコが、手を叩いて
手伝うーと 喜んだ。
「じゃ、全員配置にすくつく!」
ヨミが 号令をかけると、
全員が
息を合わせて
『ラジャー!!』と応えた。
修道服と、裁縫道具を 持って
サロンを 出る女性陣を
見送り、
ハジメと 副女は 契約の作成に
入る。
ふと、ユキノジョウと ユリヤが
まだ サロンに残る。
ハジメが、
「キッチン~ 案内まだだったね」
と、声をかけると、
ユリヤが
「あ、最後に、ガラスのくつ
見ていいですか?ちょっとだけ」
控えめにお願いをする。
ハジメは、もちろんと
シルバートレイに乗せたモノを
2人の前に 置く。
ユキノジョウと、ユリヤは
触る事せず、名残惜しそうに
そのモノを 見つめる。
『白波5人男はなあ、天下の大
ドロボウ一味 なんだぜ。』
カイトの言葉を ユキノジョウは
思い出した。
そして
青いサロンから
出て行く。
ハジメは、そんな2人の
オレンジのライフベストを
見つめて、
自分のオレンジの それを見て
満足げに 微笑んだ。
船は 港へ 走る。
向かっている。
走行中は、ライフベストを
全員着用させられた。
お揃いの オレンジベストを着て、
副女さんの告白を聞いた全員は、
只只、驚いていた。
「あー。でもやっぱり1番困る
のが、服だわ。さすがにスーツ
持ってきてないし。港で買うにも
きっと時間がないし。迎えが直接
回されてるみたいだから。」
副女は、そう肩をすぼめてみせた。
「え、そんなに時間ないの?
少しは、服とりに行けるん
じゃない。あんまりでしょ。」
会計女が 唇を青ざめさせて
副女に 応えるけど、
「向こうは、そんな猶予を与える
時間はくれないみたい。なるべく
反撃の時間を やりたくないんで
しょうよ。そんな気もないけど」
副女と会計女の やり取りを、
聞いていた ハジメが 声をかける。
「あのさぁ、そんなに服装って、
大事なのん?学校の外の会議な
だけならぁ、急に呼ばれても
揃えられない事だってぇ、
あるもんなんでしょ~。」
ヨミと、シオンも ハジメの意見に
同意するように、
頷いている。
けれども、副女と会計女は、
「例えば、お葬式が入れば
何がなんでも、喪服で参列する
よね?それと同じなんだよ。」
ため息交じりに、返事をして
会計女は、
「アタシ、持ってる荷物に、
使えそうな服ないか、考えるよ」
と、鞄の場所に移動した。
それを聞いた ハジメは、
眉毛をハの字に下げる。
「そんなに~大事なのかぁ。
参ったなぁ。水着とか、リゾート
パレオならさぁ、用意してるけど
ドレスって訳にいかないよねん」
ユキノジョウも ユリヤも、
その話を 真剣に聞いていた。
もう何年も 行事を見てきている。
正装とか、着物、袴、
ありと
あらゆる 服装の規定を
肌で感じている。
今、リゾート気分満載の洋服しか
無い事の 重大さを
子供ながらに、
感じていた。
再び、船内の空気が
重くなるかと 思った時
「あ!!オーナーっ!あれ!」
シオンが、ハジメのスーツを
引っ張った。
「あれを、リメイクしたら、
グレーのワンピースとか なる?
かも?しれないですって!!」
シオンの言葉に、ヨミも興奮して
「そうよ!オーナー。あれです。
シスターグレー!!使いましょ」
シオンと同じく、ハジメのスーツを引っ張ってくる。
「なにぃ?皺になるからぁ。
やめてよぉ。シスターグレー?
そんなのあったっけ?って、
あぁ~~~あれ?!あれか~」
興奮する3人に、
ユキノジョウ達は ???な
表情だ。
「乗りかかった船だよぉん。
副女さんに、上手くいけばぁ、
最高の衣装を、着せれるかも」
そう言って、タレた目をウインク
する。
「さあぁ、みんな!サロンへ、
ご招待するよん。我がクルーズ
ギャラリーに~。いらっしゃい」
そう言うや、
デッキの奥の階段に、
ユキノジョウ達を 案内する。
「ハジメさん。
下行ってもいいの?」
アコが 興味津々で、ハジメに
聞いている。
ジャグジーがあるデッキは、
半オープンデッキで、 その奥に
シャワー室があった。
このデッキのオープンに、
ジャグジーが設備されていて、
半分には ビーチソファーセット、
ガーデンテーブルセット、
バーカウンターがある。
このデッキまで 直接上がってきた
ユキノジョウ達は、
まだ 下のサロン階には
入っていなかったからだ。
「オーナーがOKと言ってますから
ぜひ、どうぞ。その代わり、
貴重な物がありますから、
気をつけて下さいね。いい?」
ヨミが、
波形の細工ツルを 、指先で
押し上げて、アコに笑う。
3層になる 2階は、サロン階。
今回の移動する
ギャラリーとして 内装している
と、ハジメが ドアを 開けた。
「「「うぁ。・・・・」」」
子供達が 思わず歓声をもらす。
中は、青いステンドグラスの
教会を模倣した、装飾に
絵画や、美術品、アート作品
宝飾、骨董等が 部屋を
構成している。
「なに、、これ」
船の中が、
まさか こんな風になっている
とは、露にも思わない。
湿度や温度の管理も厳重なのか、
青い室内のせいか、
一層ヒンヤリとする
サロン。
その真ん中に、ガラスの箱が
テーブルの様に横たわる。
「シオンくんはぁ、これの事を
言ってたんだよね?でも~、
そのまんまじゃ、ダメじゃない」
ハジメが、そのテーブルを
指さした。
「基本、服ですもん。直しは、
長袖を、半袖に。トゥニカの
丈を詰めて、ウインプルを
ケープ襟でつければ 大丈夫っ」
シオンが、前のめりで ハジメに
提案する。
「なるほどね。それなら、
グレースケリーが着てそうな
スーツワンピースになるわ。」
2人の会話に、ヨミも賛成する。
ユキノジョウ達は、
そんな会話でも、あまり
ピンとこない。
「ほらぁ、来て見てごらん~。」
ハジメに呼ばれて、テーブルを
上から見て、
ユキノジョウは、ギョッとする。
ユリヤも、後ろから
覗き込んだ。
「人?」
ユリヤの声に、アコも飛んで覗く
「うあ!、お母さん!人がいる」
何それ?!と、母親達が
ガラステーブルに近づいた。
「?!デス、マスク、?」
副女の呻き声に、
ハジメが 口を弓なりにした。
「そうぅ~デスマスクアート。」
ガラスのテーブルの中に、
草花の造花に納められた
修道服のデスマスクが ある。
まるで、水中の オフィリーヤだ。
「うぃ、、」
会計女の眉間に皺がよる。
「オーナー、意地悪して遊ぶ暇は
今はないと思われますけど。」
ヨミが、ハジメを嗜めた。
「ごめん、ごめんよぉ~。本物の
デスマスクじゃあないんだよねん
『デスマスク調』のアート~。
だから、体もないけどぉ、ほら」
ガラスのテーブルだと思ったのは
ガラスの棺ケースだったのか、
蓋をハジメが 『キィン』と
開いた。
「体は、修道服に綿を入れて
形を作ってたんですっ。これ!
このグレーの修道服をリメイク
したら、正装ワンピースっぽく
なりますって、絶対!!」
シオンが、デスマスクを
外して、体にしていたという
グレーの修道服を持ち上げた。
「それにしてもさぁ、シオンくん
別にデスマスクにぃ体は作ら
なくて良かっんだよん~。」
確かに、夜にサロンに入るのが、
とか、ヨミが 愚痴を言う。
ユキノジョウと ユリヤの
顔色が 悪くなった。
アコは、すでに離れている。
「だってですねっ、自分の
エンディングワンピのイメージを
ちょっとしたかったんですよ!」
シオンが、副女に 修道服を当てて
直し丈を 見ながら応える。
副女も、これを直せたら、
助かりますとか 礼をして、
会計女に、どうかと 聞いている。
「だから、後輩ちゃんは 先に
ウェディングドレスを
考えなさいよ。いつもいうけど」
ヨミが ジト目で シオンを
手伝う。
「あの、ハジメさん。本当に
いいの?これ、商品なんじゃ。」
副女が 修道服を当てられながら
ハジメを見やると、おやと、
「デスマスク演出のディスプレイ
扱いだからねぇ~、何本も金額は
しないんだけどぉ。アンティーク
ではねぇ、あるんだよねぇ。」
顎に、手をやり考えるポーズに、
「アタシ達でも 船の移動で
直せるから、助かるのは
助かるけど、、、、」
副女の言葉に ハジメは、
また口を弓なりにした。
「高いよん。でもねぇ、金額では
ないんだよねん。
こ~ゆ~時の 相場はねぇ。」
「今すぐは無理だけど、戻ったら
振り込みするよ。って、そんなに
高いの?マジで?うそ?でも、」
副女の言葉を 遮り、ハジメが
ユリヤを見て言ったのは、
「香箱ちゃんのぉ、ポケットに
入っている大事なぁモノ。
それを、担保にしてもらう~」
だった。
「ユリヤのポケット?」
副女と、会計女、アコは 意味が
わからない顔をするが、
他の4人は、ハッして意を汲む。
「いや、オーナーそれは無し
ですよっ。いくらなんでも!」
シオンが 顔色を悪くする。
自分の提案が 意外な結末を
招く 予感がしたのだ。
「えぇ~。これ程担保に向いた
素敵なモノはないよん~。」
ヨミも、
「いくら、前が 絶対担保になる
目利きだったからって悪魔です」
と、非難する。
その様子に、副女が ユリヤを
心配して
「ユリヤが嫌なら、いいから。
この話は、なかった事にして」
と、ユリヤの肩を ポンポンと
柔らかに あやした。
ユキノジョウは、
そんな 副女とユリヤを 見つめ
ながら、
走馬灯のように、これまでの
行事で 慌ただしく着替える
副女と、手伝う ユリヤを
思い描く。
入学式や卒業式の着物に、
離着式の 袴。夏祭りの 挨拶回りに
浴衣を 着付けて、
行事の 挨拶には、何タイプも
礼服を 用意して、
急な 葬式に 対応するのに
ロッカーに 喪服を入れて。
それは、式服という
武装 だったはずだ。
今、最後の最後に 戦いに出る
戦闘服が ない。
ユリヤも そう 考えていると
ユキノジョウは わかったから、
「ユリ、オレはいいよ。」
と、ユリヤに 伝えた。
その声に、肩を揺らして
ユリヤが ポケットに手を当てる。
ユキノジョウは、
ユリヤの目をみて、
頷いた。
それを、合図に
ユリヤは、黙って ポケットから
それを ハジメに
差し出す。
と、
白く
小さな手を開くと、
青い教会のサロンに、
ステンドグラスからの光を
受けて、
ガラスの靴が
オーロラの虹を パァンと、
青い
天井に
作った。
大人達が、
「「「「へぇ!」」」
っと、その光が作った
波の揺らぎのような
プラネタリウムに 間抜けな声を
あげる。
「ママ。ユキくんに さっき
もらった。これを、服にして」
ユリヤが
半泣きになって、副女に
すがった。
「ユリヤちゃん、、」
会計女が、声を漏らす。
「副女さん、それ、お金払ったら
返してもらえるんだよね!
オレも 払うから 使ってよ!」
ユキノジョウも、強い目をして
副女を 助けると、
会計女も、アタシも払うよ!っと
叫んでいる。
そんなやり取りを
ハジメは 聞きながら、
差し出された
ガラスの靴を
傍らにあった、シルバートレイに
大切な様にして 置く。
「じゃあ~、交渉成立~。」
ハジメは、口を弓なりのままに、
ユキノジョウに 語る。
「この靴にぃ、もしもだよ?
意味が無くなった時はぁ、
服の金額をね?踏み倒す事も
出来るからねん。覚えててね?」
そんな、ハジメの言葉に
ユキノジョウと ユリヤは、
目を瞬きだけする。
女性陣の非難の視線は、
半端がない。
「では、みなさん!早速 戦闘
開始ですよ!服を直します!」
ヨミが、パンと手を叩いて
各々のこれからを、
次々に指示する。
「後輩ちゃんと、白鷺くんママは
服の直しを、私とします。
袖を後輩ちゃん、裾を白鷺ママ。
襟ケープを私で。よいかしら?」
女性陣が ふざけて
『ラジャー!!』と
返事をする。
「オーナーと、副女さんは、
服の売買契約を 、オーナー?」
ヨミは、すちゃっと、
指を立てて、ハジメに言う。
「はぁ~い。鬼軍曹~。」
そんなヨミに ハジメが応えると
「何が、鬼軍曹ですか!よっぽど
オーナーの方が 奪衣婆です!」
シオンがやり返した。
「子供達は、炊き出しです!
炊飯器ありますから、おにぎり
作れますか?お味噌汁と。」
ユキノジョウと、ユリヤは
大きく頷く。
「子ども会の夏祭りで、いつも
豚汁やるから、大丈夫だぞ!」
アコが、手を叩いて
手伝うーと 喜んだ。
「じゃ、全員配置にすくつく!」
ヨミが 号令をかけると、
全員が
息を合わせて
『ラジャー!!』と応えた。
修道服と、裁縫道具を 持って
サロンを 出る女性陣を
見送り、
ハジメと 副女は 契約の作成に
入る。
ふと、ユキノジョウと ユリヤが
まだ サロンに残る。
ハジメが、
「キッチン~ 案内まだだったね」
と、声をかけると、
ユリヤが
「あ、最後に、ガラスのくつ
見ていいですか?ちょっとだけ」
控えめにお願いをする。
ハジメは、もちろんと
シルバートレイに乗せたモノを
2人の前に 置く。
ユキノジョウと、ユリヤは
触る事せず、名残惜しそうに
そのモノを 見つめる。
『白波5人男はなあ、天下の大
ドロボウ一味 なんだぜ。』
カイトの言葉を ユキノジョウは
思い出した。
そして
青いサロンから
出て行く。
ハジメは、そんな2人の
オレンジのライフベストを
見つめて、
自分のオレンジの それを見て
満足げに 微笑んだ。
船は 港へ 走る。