異世界で女嫌いの王太子に溺愛されてます。
ここの住人……
私はいつまでここにいられるのだろうか……

そう思ってハッとした。〝いられるのだろうか〟って、これじゃあ、自分はここにいることを望んでいるみたい。この気持ちは、後で一人になった時に、じっくり考えてみよう。

「ありがとう。そう言ってもらえて嬉しい」




一仕事終えると、調理場を後にして部屋で一人、ゆっくりしていた。さっき心に浮かんだことを思い起こしてみる。
モーリーンの言葉に、〝いつまでいられるのだろうか〟と、自然に考えていた。元の世界に帰りたいかと問われたら、帰りたい気持ちは確かにある。

けれど……
ここへ来る直前の数ヶ月は、散々な日々だった。彼氏の仁と友人の裏切りに、好きでもない人からしつこく言い寄られ、それがもとで仕事の邪魔をされて……

だめだ。思い出すほどげんなりしてくる。
それに比べて、ここはすごく居心地がいい。最初こそ不安しかなかったけれど、今は少しとはいえ、自分の役割を見つけられた。すっかり離れてしまっていた剣道も、思わぬ形でやれている。

そもそも、元の世界に戻る方法がわからない。帰りたいとか以前の問題なのかも。



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