異世界で女嫌いの王太子に溺愛されてます。
その夜、温かな夢を見た。
陽だまりの中で、大好きなこむぎが私の方へ駆けてくる。

「こむぎ!!」

首筋を撫でてやれば、気持ち良さそうに目を細めて尻尾を揺らす。

「悠里ちゃん。こっちの世界は楽しい?」

そう尋ねるこむぎに、笑みを返す。

「そうね。みんなよくしてくれるし、すごく居心地がいいよ」

「じゃあ、このままここに残る?」

「……」

「悠里ちゃん?」

「こむぎ。私ね、わからないの。ここに来て、少しずつ自分の居場所を見付けられてる。このお城に滞在していいとも言われて、ほっとしてる。
でも、ずっといていいのか、元の世界はどうなってしまったのか、この先どうなるのか、私怖くて……」

「大丈夫だよ、悠里ちゃん。悠里ちゃんが心から望めば、どちらの世界でも大丈夫。選ばなかった世界のことも気にしないで。僕に任せて」

「……うん」

「もし本当に元の世界に帰りたくなったら、心の底からそれを望んで。僕が迎えにくるよ」

「わかった。こむぎ、ありがとう」






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