異世界で女嫌いの王太子に溺愛されてます。
王城内の人伝に、私がしてきた仕事を耳にした人から面談を望まれることが少しずつ出てきた。
私の立場が曖昧なせいか、すれ違い様や調理場で声をかけられるんだけど……

「ユーリさん。私の父親が頭痛に悩まされたり、顔が紅潮したりするんですけど……」

私は医者ではない。だから診断もできないし、無責任なことは言えない。
ただ、目の前で必死に訴えられたら、放っておくこともできない。そこで、ブラッドにお願いして、医師の診察を受けた上でアドバイスさせてもらうことにした。医師の方も興味があるようで、私が同席することを厭わないと求めてくれている。

こうなってくると、元々していた仕事とあまり変わらない。ヒューバートにお願いして、昼食の準備する時間を、この面談にあてた。

とはいえ、元の世界の医療とは全く違う。医師ができるのは、患者からの聞き取りと、脈や肌艶といった外見でわかることで診断をしていき、それに合わせた薬草を調合していくことぐらいだ。

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