異世界で女嫌いの王太子に溺愛されてます。
あれは、私が8歳ぐらいの時だった。
近所の駐車場で、段ボールに入れて捨てられていた仔犬を見つけた。薄茶色の体に、真っ黒な大きな瞳。私は迷うことなく、自宅に連れ帰った。

「お母さん、お願い。ちゃんとお世話をするから」

「うーん……お父さんに相談しないと……」

母は明らかに仔犬を気に入っていた。問題は父だ。警察官の父は、一人娘の私をすごく可愛がってくれたけど、何かと厳しい人だった。父の帰りを不安な気持ちで待ちながら、ずっと仔犬の体を撫でていた。


「ただいま」

帰宅した父は、仔犬を見ると一瞬驚いた顔をした。

「悠里、可愛いだけじゃ飼えないんだよ。この子は生きているんだ。餌や水を毎日あげて、時にはシャンプーもしてあげなきゃならない。トイレの掃除だってあるんだ。それに、人と同じで病院に行く必要もある。そんな大変な世話を、ずっとできるか?」

「うん。病院とかは手伝ってもらわないとできないけど、私、ちゃんとお世話をするよ」

父は私の答えに満足そうに頷くと、母と少し話をした。



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