異世界で女嫌いの王太子に溺愛されてます。
「悠里が、ただ〝できる〟と言うだけなら、許さなかったかもしれない。でも、悠里はちゃんと手伝って欲しいこともあるって思えたな」

私はコクリと頷いた。

「うちで飼う以上、この子も家族になる。お世話は連れてきた悠里に任せる。でもね、父さんも母さんも、それを手助けしていくよ。
さあ悠里、この子は男の子のようだ。名前をつけてあげて」

「うん!!」

父の言葉が嬉しくて、元気に返事をした。仔犬は薄茶色で温かな色をしていた。

「こむぎ!!この子、こむぎに決めた!!」

こうして、こむぎは私達家族に加わった。
それ以来、水と餌やりはもちろんのこと、毎日の散歩も欠かさないようにした。こむぎはとても賢い子で、芸もたくさん覚えた。こむぎが来たことで、家庭内はますます明るく賑やかになった。


でも、そんな幸せな日々は突然終わりを迎えることになる。
母が病気で他界したのだ。
私も父も、ふさぎがちになってしまった。
けれど、そんな私達を励ますように、こむぎがいつも一緒にいてくれた。
そのおかげで、私達は少しずつ前を向いて歩き出した。
それは、数年前、事故で父を亡くした時も同じだった。

< 18 / 247 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop